鉄道開通
文明開化の象徴である鉄道が上野・熊谷間に開通したのは1883年(明治16)。この時、上野の次の駅として王子停車場が誕生しました。当時、王子周辺は一農村から近代工業地帯へと変貌を遂げる時期にありました。渋沢栄一の提唱により1875年(明治8)に開業した抄紙会社(翌年、製紙会社に改称、後の王子製紙)は、そのさきがけです。鉄道唱歌・北陸編[1900年(明治33)作]には、次のように唱われています。
(3番)見よや王子の製紙場 はや窓ちかく来りたり すきだす紙の年にます
国家の富もいくばくぞ
(4番) 春はさくらの飛鳥山 秋は紅葉の滝の川 運動会の旗たてて かける生徒のいさましさ
飛鳥山や王子を描いた画には、煙突からモクモクと煙を吐く製紙会社が象徴的に描かれるようになり、江戸以来の桜の名所は、明治以降は「東京開化名所」として知られました。
画像:「東京上野ヨリ武州熊ヶ谷ニ至ル蒸気車往復繁栄之図」栄斎重清/紙の博物館所蔵